一、「王族」への第一歩を踏み出す


 よし、「修行」をしよう!
 そう思ったのは昨年12月。
 毎年、目標を立てる習慣などはないが、2018年の目標は昨年末に既に決まっていた。

 

 

 修行と言っても、滝に打たれたり、断食したり、写経をするわけではない! 「飛行機に乗る」ことを目的とした修行なのである。
 別名「マイル修行」、または「ステータス修行」。Wikipediaによると、

航空会社の運営するマイレージサービスに沿って多頻度客へ提供される特典を目的とした、有償航空券による旅行の俗称である。そのような旅行者は短期間に多回数飛行機に乗り続ける上、体力と時間と金銭を消耗するなど、心身と経済的な苦痛も伴うため、僧侶の修行に例えられ、マイル修行僧と呼ばれる

とある。海外では、マイルやポイント、ステータスなどの最大化を目的として飛行機に乗る「マイレージ・ラン(a mileage run)」としても知られている。

 海外で「マイレージ・ラン」と呼ばれているものは、どちらかというと、いかにして「安い費用でマイレージを貯めるか」ということが重要視されることが多いのだけれども、日本で言うところの「修行」は、航空会社の上級会員のステータス獲得に重点が置かれる。それはなぜか。

 実はほかの航空会社では、「上級会員ステータス」を獲得したとしても、ステータスを維持していくためには、次年以降も同様にして飛行機に乗り続けなくてはならないというのが一般的だ。しかし、日本航空(JAL)と全日空(ANA)に限っては、ひとたび「上級会員ステータス」を獲得すると、専用のクレジットカードで年会費を払い続ける限り、そのステータスを維持することが可能なのだ。

 ここでいう「上級会員ステータス」とは、JALでは「JMBサファイア」会員以上を、ANAについては「プラチナサービスメンバー」以上のステータスを指し、これらの上級会員になるためには、主にマイレージ積算対象便へ搭乗することで得られる「フライトマイル」をもとに換算される「ポイント」を貯める必要がある。

 本来、「上級会員ステータス」は出張等で搭乗が多い顧客に対して付与されるサービス・プログラムで、そうでない者がステータスを獲得し、飛行機に乗る際に質の高いサービスを受けたいのであれば、半ば強引に飛行機に乗りまくらなければならない。すなわち、それが「修行」なのである。

 JALの場合、1〜12月の1年間の搭乗マイルを基に得られる、FLY ONポイントを50,000以上獲得(うちJALグループ便で25,000ポイント)するための「FOP修行」を行うか、50回以上対象便に搭乗し(うちJALグループ便で25回以上)、その中でFLY ONポイントを15,000以上貯める「回数修行」のどちらかを行うことが条件となる。
 ANAの場合には、以前はJALのような「回数修行」も可能だったが、現在は1〜12月の1年間にプレミアムポイント「PP」を50,000以上(うちANAグループ便で25,000PP以上)獲得する「PP修行」のみ可能だ。

 このような「FOP修行」や「PP修行」を行う際、獲得できるポイントに対して支払う運賃の経済性を示す指標として、「FOP単価」、「PP単価」というものがあり、これらの単価が10円以下であれば「経済的」だと一般的には言われている。
 仮にFOP単価、PP単価を10円とすると、修行をコンプリートするためには、航空券の費用だけで約500,000円かかると考えなければならない。
 JALの場合は、例年、初回搭乗FLY ONポイントボーナスキャンペーンとして、JAL便への初回搭乗に対して、ボーナスポイントとして5,000ポイントが付与されるため、約450,000円だ。

 
 私のペンネーム、「BINBOSE」。
 これは、私自身がこの人生の中で金に余裕があったためしがないこと、そして「坊主」として「修行」に励むこと、さらには、私が度々訪れているタイの公用語であるタイ語でบิน(ビン)という言葉が「飛ぶ」を意味することから名づけた。
 このペンネームが示すように、貧乏な私はここ数十年、公共料金や交通費などはもちろん、コンビニでも毎回クレジットカードを使用して、日々、セコセコとマイレージを貯めることに専念することで得た特典航空券を利用し、無料で飛行機に乗ってきた。

 そんな私が飛行機に乗るのに金をかけるなんて!
 ANAではなく、JALのJGC修行を行うにしても、航空券だけで約450,000円使うのは非常に痛い!
 それに、特典航空券を利用していくら飛行機に乗っても、クレジットカードをいくら使っても、残念ながら上級会員ステータスを得るための搭乗回数やFOPは貯まらない。

 何とか安く修行を行う方法はないものかと、日頃から情報を収集しているが、多くの修行僧が実践しているような、週末の度に羽田ー那覇間を1日2往復したり、運賃が安い福岡ー宮崎間を度々往復したり、「跳び飛びの旅 小型プロペラ機でホッピング」という2泊3日で16フライトに搭乗し、奄美群島をホッピングするJALのツアーに参加するような「回数修行」はもちろんのこと、「距離修行」を行うにも、やはりとにかく金がかかる。
 「マネーの虎」ならぬ、「マネーの招き猫」でもいない限り、ノーマネーでフィニッシュである。

 こんなことを考えていると、結局、航空券を購入することが惜しくなって、毎年「修行」をしたくてもできずにいた。

 そんななか、昨年12月にJALホームページ上の「おトクな運賃・代金情報」の中で見つけたのが、「クアラルンプール行きおトクなビジネスクラス運賃登場!」という東京からマレーシア・クアラルンプール行きのビジネスクラススペシャル運賃。通常、この区間のビジネスクラス料金は約250,000円するところが、往復でなんと90,000円!空港税や燃料サーチャージを含めても10万円を少し超える程度だ。
 JALと同じワンワールドアライアンスに加盟するマレーシア航空が度々、東京-クアラルンプール間が約10万円というビジネスクラス航空券のセールを行っていることがあり、これを利用することでJALのマイレージに加算することができ、そのときのFOP単価は10円を下回ることがあるが、今回のチケットのFOP単価を計算すると8円を切る。
 このビジネスクラスのチケットを購入して、マレーシアを2往復すれば……。

※JALホームページより

※JALホームページより

 これは「修行」するしかない!
 JALで50,000FLY ONポイントを獲得し、「JMBサファイア」となり、JAL Global Club(JGC)に入会する!
 そう心に決めたのであった。

 JALに乗り、「JGC修行」をコンプリートすれば、JALのみならずアメリカン航空、ブリティッシュ・エアウェイズ、キャセイパシフィック航空、マレーシア航空などのワンワールド アライアンス加盟航空会社の便を利用する際に質の高いサービスを受けることができる!

 

 

 

 

 エコノミーカウンターに長い列ができているのを尻目に、ファーストクラスカウンターやJALグローバルクラブカウンターでチェックインでき、受託手荷物の無料許容量を気にすることもない!
 
 日本国内外の多くの空港ではファストセキュリティレーンを利用でき、手荷物検査にも並ばなくても良い!
 
 搭乗時間まで、ラウンジでビールを飲みながらゆっくり過ごすことができる!
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時間になれば、待たずに優先搭乗ができる!
 
 預けた荷物にも「プライオリティータグ」がついているため、ターンテーブルで先に荷物が出てくる!
 
 その他、特典が盛りだくさんだ。初めに多少の出費はあるが、貧乏でもこのように金持ちのような旅ができる!
 
 まさに悟りが開かれる!!!

 私と同様、JGC修行を行っているジャニーズの風間俊介くんは、JMBサファイアのステータスを獲得し、JAL Global Clubに入会してVIP扱いされる人々のことを「王族」と表現している。

 よし、王族になってやろうじゃないか!
 王族、王族、王族、……、王族じゃ!

 そんなことを念じながら、「王族」への第一歩を踏み出したのであった。

 

 


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