昔から神聖な空気感が好きで、いろいろな神社を一人でよく巡ります。
京都を旅した時も、神社を訪ね歩いていました。
とある小さな神社の鳥居をくぐると目の前に小さな机があり、そこに神社の説明が書かれた資料が置かれていました。その資料を手に取ろうとした時、出しかけた手が止まりました。
資料の上にじっとこちらを見つめるカマキリがいたからです。
まっすぐな目は僕を正確にとらえていて、動けませんでした。
しばらく見合っていると、あることに気づきました。
カマキリの足が1本ありません。
それまでなぜまったく気づけなかったかというと、足がないことなど微塵も感じさせない強さを感じたからです。
だから気づいた後もかわいそう、大変だなという気持ちは起きませんでした。それよりも凄い、カッコイイと思いました。
僕は今まで何かできなかったり、壁にぶつかったりすると、
「~だからできなかった。だから仕方ない」
そう言い訳をしてきました。できない自分を認めたくなかったから。
でもそんな自分のちっぽけな自尊心を叩き潰してくれたのがこのカマキリでした。
僕にはカマキリが、
「足が1本無い? それがどうした。俺は残りの足で立てているし、不自由なく生きてる」
そう語りかけてきた気がしました。
言い訳して生きてきた自分を恥じながら、同時に、その堂々とした姿に「僕もこうありたい」と強く思いました。
自分を成長させてくれたこの小さくも強く気高いカマキリは、神社を守る小さな神主でした。
そんな神主に「ありがとう」と伝え、背筋を伸ばして胸を張り、神社を後にしました。