1.面白いって何だろう?


 様々な趣味を持つものに対して、家族を含む他人が「それ何するの?」とかいう質問がいちばんしてはならない質問である。

 集める理由をコレクターに聞くこと自体が間違っている。答えるエネルギーや時間さえもったいないくらいである。
 ただひとつ堂々と言えるのは、それは本人にとって面白い物であり、集める行為、増えること自体が面白いことだからである。
「一体それのどこが面白いの?」と聞かれれば、その答えは難しい。
 千差万別、ひとそれぞれなのであって、別にあなたに理解していただかなくてもよいのである。
 しかしこうして発表の機会をいただくと、一人くらいは「えー、おもしろいじゃん」と笑ってくれたりする人がいたりする。
確率は低いと思うのだが、それがとてもうれしいのであって、その理解者を求めて日々奮闘するのであります。

 したがって今回はスタートですから、自分勝手に地名などの面白いと思ったものを様々なジャンルごとにご紹介させていただきます。まぁ我慢して「ほほう、こういうのもあるんだ?」という程度に見てください。

写真1

 

 

 隣の席に奥様が乗っていてナビをしながら軽のワゴン車で収集旅に出ることが多いのですが、安全第一にキョロキョロしながらの運転です。
 いちばん目立ち解りやすいのはこの一文字の地名ではないでしょうか? 一文字の次に町とか村と付かない「大字小字」が一番良いので、きりがないほど多いような気もしますが、どんどん集まるほうが入門するには最適です。
 しかもこれは「鯨」ですよ、写真を撮れずにおられますか? しかも茨城の内陸の方ですから発見した時は驚きました。こういう地名を偶然見つけるからやめられないのです。

写真2

 

 

 同じ動物でもこちらはいかにも海、「アシカ」です。
 千葉の銚子電鉄の駅名です。駅名が果たしてその地方の地名となっているのかは分かりませんが、こういう駅名、バス停などもそこに住んでいる人たちには立派な場所を表す名前ではあるのだから、正式な住所名とはなっていなくても地名の仲間と私は考えております。

写真3

 

 

 さていよいよそのバス停です。私の出身は岩手県なので、帰省をするたびに東北各県を回り、こういった地名やマンホールなども拾って歩きます。
 現在住む千葉の近県とともに、当然ながら地域は偏りつつもコレクションは増えてまいります。
 いろいろ調べて「ほほう、こんなのもあるんだ?」と、もちろん私も感激したりするわけですが、現地に行き写真を撮って初めてコレクションとなりますので、友人の理解者から写真をいただいても、もちろんそれはそれでうれしいのですが、自分のコレクションとは別にしておきます。
「昆布掛」ですよ! もう二度とこの場所にはいかないと思ったりします。ここは青森県でした。もし撮影するかどうしようかに迷ったら? そうです迷ったら、撮影です! 邪魔にはなりません、引き返しても撮影です。次回はないと思いましょう。

写真4・5・6・7

 

 

 

 

 

 

 

 

 いろいろな表示板などを見てくると、ふと気が付くものがあります。それがこの数字を含む地名です。
 単なる区分けのこういった「一の分第一」は、やはり驚きです、この先には「二の分」はなくて「三の分」になるのが面白いところです。

 写真5の「後三年」のように、歴史の教科書に出てくる地名もあったりします。
 ここは秋田県です。

 そして写真6の「六本木」、なーんだ有名な地名じゃないか、誰でも知っている、集める価値なんてないよ! などと言わないでください。
 ここは岩手県の山の中の六本木です。
 こういうシチュエーションで全国のなんとか銀座や、渋谷、池袋など都会で有名な地名を地方で集めるのも楽しいものです。
 そしてこの数字の楽しいところは次回にでも詳しく紹介しますが、色々集めてくると「一、二、三……と、いっぱい揃ってくるのです。するとありふれた六本木を撮っていないと、コンプリートできくなり、また改めて撮りに行かなくてはならなくなります。
 とにかく少し気になったら拾うのです。撮影するのです。

 写真7も同じ数字ですが、こちらはリズム感がありますね? 「五臓六腑」とか「四苦八苦」みたいな感じですね? 語呂合わせのように、繰り返す言葉なども地名としては面白いジャンルに入ると思います。千葉の冨里「七栄六区」です。

写真8

 

 

 地元の人は別に不思議とも何とも思わないのが、難読のジャンルです。
 昔から住んでいる人には当たり前なのでしょうが、「いったい何と読むのだろう」これが漢字の楽しいところですよね?
 漢和辞典にも出てこないような読み方の地名は見つけると楽しいものです。しかしある程度調べていかないと、普通に見かける漢字でもとんでもない読み方であったりして見逃したりするので注意が必要です。
 バス会社によってはちゃんと読み仮名を振っているところもありますのでとても助かりますが、逆に画像を見せてクイズにするのが面倒な場合もあります。「随分附」は茨城の地名ですが、これで「ナムサンヅケ」と読むんですよ。

写真9

 

 

 わかりやすいものに長い名前があります。
 ただしこれもどんどん受け狙いのような感じでわざとらしく長い名前を付ける場合もあるので、やりすぎの場合は興味が失せる場合があります。
 駅名などに多いのですが、バス停の場合は、近くにある会社の名前が入ったりするので仕方なく長くなりますが、それらはOKなんですよ!

写真10

 

 

 自分の名前がその土地の名前になっていたら素敵ですよね? 農村地帯に多いのが「徳次郎」など、たぶんこの地域を開拓した人や地主の名前ではないのでしょうか?
 これは長野県の安曇野で見つけました。詳しいことはわかりませんが、苗字ではなく名前で付けられている場合はいろいろ想像されて楽しいものです。
 昔の人の名前が多いのは仕方のないところでしょうね?

写真11

 

 

 これは偶然というか、「子」が付いたので女子の名前に見えるということに加え今の時代ですから「松子」というバス停を見つけたら、そりゃあ集めるでしょう? この何とか子という名前は、「米子」など大都市にもよくあるので、訪ねた場合は躊躇せず集めましょう。

写真12

 

 

 名前に関係なく男、女の文字の入った名前もあります。
 この場合男よりは女の方が多い気がします。息子より娘(息子はまだ見つけていない)、父より母が多いのは仕方のないところでしょうか? ここ「女石」は、福島県白石付近のバス停です。

写真13

 

 

 おめでたい地名もたくさんあります。
 豊作などの願いを込めて地元の皆さんが付けたのかもしれません。このジャンルも集めていて楽しいものです。
 農業ではなくても日本では各地に金山がありましたね。そればっかりでもないでしょうが「金」の文字を入れた地名もたくさんあります。
 この「金川」は石川県の二級河川です、砂金でも取れたのでしょうか?
 地名までにはなっていないでしょうが、良いですよね? ちなみに「カナカワ」と読むそうです。
 山や川にも面白い名前が付けられて楽しいものです。
 山の名前は地図上ではたくさん発見しますが、なかなか頂上まで登山して写真を撮るわけにはいきません。せいぜい登山口の看板にでも巡り合えたらラッキーだと思って拾っていきます。
 その点、川(橋の名前を含め)や沼はすぐそこまで行けますから集めやすいものです。

写真14

 

 

 これも岐阜県で偶然見つけて引き返して撮影した「黒血川」です。いいですよね?
「あー、長距離ドライブを頑張ってきてよかった」と感動しました。
 関ヶ原も近く様々な合戦が行われてきた地域ですから、由来はわかりませんが、なにか不気味なものを感じます。看板の汚れ具合がさらに不気味さを増します。

写真15

 

 

 これもその収集旅行の時に偶然見つけました(ほとんどそうです)。
「豊満」ですよ、いったいどれくらいふくよかな人が多いところなのかと想像したくなります、良い地名です、幸せ感たっぷりの名前です。
「ホウマン」ではなく「トヨミツ」と読むそうですが、そうなると何か由緒ある良い名前であると思われます。

写真16

 

 

 面白いと感じる名前はジャンル的にはたくさんありますが、意味的にも何の面白みもないが、バス停であるから面白いというのがあります。
 典型的なのがこの「出口」ですね? そのとおりなのでしょう? 単純明快なんですが、いったい何の出口なのかはその地域の人たち以外にはわからないかもしれません、長野の身延山付近で見つけて、Uターンし引き返したコレクションです。
 まぁこうして遠くから見てもはっきり読める大きな文字のバス停はこちらにとっても助かります。
 次のバス停の名前も大きく書いてあるバス会社もありますが、歩道側にしかその面を向けていなかったりする路線もありますので読み取れない場合もあります。また田舎に行けば行くほど道も狭くなり、上り下りで片側にしかバス停がない場合もあります。収集には事故の無いように十分注意して車を止めてから、安全に留意して撮影してください。

写真17

 

 

 バス停自体が素晴らしい雰囲気を持っている場合もあります。
「上ゲヤバス待」これぞ田舎のバス停ですね? よい雰囲気です。こういったものを見つけたときはよい風景としてちゃんと撮影してあげましょう!
 ここは長野県の戸隠の山の中で見つけました。

写真18

 

 

 日本には確かないはずなのがこの「国境」です、ここは滋賀県、昔は国というのは藩のことですから、こうした地名も生まれたのでしょう。
 この場合「境」や「堺」では一文字の地名としてはもちろん集めますが、面白さでは「国境」にかないませんね?

写真19

 

 

 リズム感のある名前でも少し書きましたが、語呂合わせ的にも、この「小島中島」いいですよね?
 場所は福島県川俣町です。しかもいろいろなパターンが山、川、田などでありそうです、数は少ないのですがまぁいずれ紹介していきます、お楽しみにしていてください。

写真20

 

 

 かなり地元密着なバス路線が多いわけで、「役場前」「郵便局前」「農協前」「診療所前」など、この路線には郵便局は一か所だから、その正式な名前にしなくても利用者にはすぐわかる、というなかばテヌキのバス停の名前も多いのです。
 しかしこの「血清研究所」どうですか? いいですよね? 千葉の佐倉にありますが、この研究所自体はもうないみたいです。こうして名前だけバス停に残っているんですね?
 バス停というのは新しい建物ができたり、それが公共の建物だったりするとたちまち名前が変わってしまいます、地名と違って突然消えてなくなる運命だったりするのがバス停です、発見した時にはとにかく撮影しておきましょう。永遠の名前ではないのです、油断せずに集めてください。
 この研究所ではないのですが、工業団地も新しい名前が多そうで遠慮しがちですが、企業名がズバリのバス停だったりするので思わぬ発見もありますよ! 古い物だけが珍しいのではありません。

 こうして様々な地名のジャンルをご紹介しました。
 国道などの表示板の下の地名や交差点、電信柱の看板に書かれた地名、もちろんバス停や駅名などで紹介してきましたが、地名とくくるよりはネーミングのおもしろさで気楽にいろいろな名前を集めてみましょう。
 面白い名前というのは自分が面白いと思えばいいのです。ひとりファイルを眺めてにやにやしてみましょう。
 とにかく削除するのはいつでもできます、少しでも気になったら撮影して収集しておくことです。

 そして最後の写真は東京の渋谷です。
 都会のバス停はこうなっているのです、もちろん全部ではありませんが……名前がわかるようにいたずら書きやシールを貼っていないのがせめてもの救い、日本人のやさしさかな? それとも後ろめたさでしょうか?

 

 


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