6月に入り、急に夏らしい陽気が続いて、はたと気づいた。
前田将多さんの「カウボーイ・サマー」を出版してから、1年経つのだと。
おもむろに本棚から手に取り、ページを開く。
この1年で老眼がひどくなった。眼鏡をはずしてページを繰る。
目の前に広がる草原と牛、そしてカウボーイ。
ついつい、思い出してあちこち読み返してしまう。時間が経つと、自分なりに記憶がよみがえる部分がはっきりしてくる。
牛の亡骸を処理するジェイクの姿、初めてのブランディングの光景。
ハーブのユーモアと含蓄あるセリフの数々。
前田さんの眼前に不意に広がった大阪・梅田の光景、荒くれ者ケヴィンの最後の「ありがとう」の言葉。
そして前田さんをはじめ、さまざまな方と関わりながら過ごした本づくりの日々……。
今年も遥かなるサスカチュワンの空の下では、前田さんが訪れたときと変わらないヘイベイル作りの日々がいよいよ始まるだろう。
ページを開くと、ふたたび出会える光景がある。
本は心の窓だ。
「カウボーイ・サマー 8000エイカーの仕事場で」
前田 将多 著