風呂に入ると奴がいる ――編集ダイアリー2020年5月28日


 おかげさまで50のオッサンになった。
 あまり感慨はないのだけれど、100歳時代と言われる今、これでようやく折り返し点(?)だと考えると、「まだまだ先は長いぞ」と、身が引き締まる思いがする。

 最近、世間の流行を見ていると、にわかに健康ブーム? のような様相を呈していることに気づいた。
 ステイホームが浸透し、3食昼寝付きの夢のような生活が実現した今、運動不足と食べ過ぎによる体重増が最大の関心事になっているらしい。

 わたしの妻もご多分にもれず、腹筋を始めた。
 それだけでは物足りず、オートミールのブランチで遅めの朝を過ごし、糖質カットの夕食を味わい、オオバコのデザートを楽しみ、酒を控えるようになった。

 わたしはどうせ続くわけがないと、半ば冷やかに見ていたのだが、奇跡的に続いている。
 結果、見た目にも分かるほど腹が引っ込んだ。
 継続は力なり。

 悔しい。
 わたしの心もざわつきはじめた。
 もともと、子どもの頃から大食漢だったわたしは、二十歳の頃には体重が110kgの大台に乗るという、完全な肥満体質だった。
 しかし、そのころ始めた自販機補充のアルバイトが予想以上に過酷で、バタンキューの断食的生活が習慣になり始めると、そこから一気に体重が減り始めた。
 当時、日々やせるのが怖くなり、これはきっと大病に違いないと病院に駆け込んだのだが、
「体も動かさないのに食べてばっかり」
 と先生からありがたいアドバイスをいただき、気がつけばおよそ50kgの減量に成功、それ以後は20年ほど70kg前後の体重を維持している。
 しかし一気にやせたせいか、お腹周りの脂肪とは30年の長い付き合いで、いまいち締まりがないのである。

 そんなこともあって実は十数年前に自宅最寄りの駅からほど近いジムに入会し、ウェイトトレーニングによる筋力アップ中心のダイエットを継続してきたつもりだった。
 だが、そのトレーニングの成果は、そのあとの美味しい酒+おつまみという、もうひとつの成果により、帳消しどころかかえって余計な脂肪という名のお釣りを溜め続ける結果となった。

 風呂に入ると奴がいる。
 鏡の向こうに、腹芸かと見間違えるような立派な顔が現れる。
 目が乳首、たるみきった二段腹がくちびるの、大きなガマガエルのような奴だ。
 ふてぶてしいったらありゃしない。
 いつもわたしのことをあざ笑っている。

 決めた。
 50歳を機にこいつと永遠におさらばしてみせる!
 毎日、腹筋および腕立て伏せとダンベルトレーニングを欠かさず、タンパク質中心の低カロリー食、糖質も制限した方がいいかしら……。
 来年の夏にはみんなにムキムキボディをお披露目できることと思う。
 そして100歳になってもムキムキであり続けるのが夢だ。

 記念すべき日に重大決心して、今日がホントに最後とビールをしこたま飲み、唐揚げとポテトフライと寿司を食べて、最後にプリンアラモードを平らげた。

 明日からが楽しみだ。

 

 


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