出版社の目的は、経済活動の視点からすれば、本という「商品」を作って売り、利益を得ることである。
でもわたしがやろうとしているのは、本という商品を作る前の「人とのつながり」で何とか口を糊していくことなのだなと少しずつ自覚するようになってきた。
「出発点」という集いの場をこの秋から始めることを意識し始めてから、わたしにとって本づくりとは手段であって目的ではないと思うようになった。
1年前に始めたバスの仕事も、旅と思索社の仕事も、わたしにとっては世界を知る切り口としてはどちらも全くいっしょなのだと思っている。
さまざまな場所で人とつながって世界を知り、洞察が深まるにつれて意識していなかったものが見えてくる。
それが蓄積されて、おぼろげだったものがはっきりと形になり始める。
本づくりとは、その瞬間を見抜き、価値を認め、未来永劫形にとどめておきたいという至極自然な欲求で生まれてくるべきものなのだと思う。
打算で作る本はいろんな意味で商売にはなるかもしれない。でもそれは諸刃の剣で、そればかり続けていると本づくりの本質を見失ってしまうと思うのだ。
自分で「出発点」という名前を付けた理由がようやく自分で分かってきた。恥ずかしながら。
でも、今の自分にいちばんふさわしい、そう思う。
その思いを貫いて自立できるようにするのが、わたしの今の一番の仕事だ。
さて、不安を友に背筋を伸ばして!