自宅から事務所に行く途中、久しぶりに地下鉄日比谷線に乗って秋葉原に立ち寄った。
もう半年ほど来ていなかっただろうか。
あれだけいた海外からの観光客はもちろんすっかり消えていた。
少しは歩きやすくなっていいかな……などと思ったけれど、街から人の姿が消えるのはやっぱり寂しい。
ヨドバシカメラで文具と新たにリースするパソコン用のマウスを購入し、JRの中央口に出た。
人通りはそこそこあるけれど、以前のような息の詰まるような混雑ではない。コロナウイルス流行の世界ではこれですら脅威なのだろうけれど。
中央通りを渡り、裏の路地に入る。
ジャンクパーツを扱う狭隘な店がひしめく通りも昔のようなにぎやかさはない。
わたし自身も、立ち止まって軒先を眺めたり、店の中の入って物色しようという気は最後まで起きなかった。
電気街を過ぎ、嬬恋坂をゆっくり上りながら、街角を愛でようとする気持ちが失せている自分に危機感を感じた。
あれだけ魅力的な街の日々をとらえようとしていた自分の好奇心は、どこへ行ってしまったのだろう。
深呼吸しても、新鮮な空気を吸った気分になれないのは、口を覆ったマスクのせいではなくて、知らないうちに心に被せてしまったマスクのせいなのだろうと思うと、悲しくてしょうがない。