好きなことをすればいい ――編集ダイアリー2020年5月8日


 ゴールデンウィークが終わった。
 振り返ってみるが、なんの感慨もない。

 「複業」のバス乗務が増えた訳ではなく、また外出もほとんどしなかったせいか、のんびりして穏やかな1週間だった。

 ずっとキーボードに向かって文字を打っていた。なんか生まれて来い! と念じながら。
 しかし、そんなに簡単ではない。
 それでも書いていると少しずつ物語が進展してくる。
 そう思った瞬間、こんなこと考えていたかな、とか、これは違うだろう……などと自分への自問自答が始まる。
 それでも押し切ってうまくまとまるときもあれば、すっかり瓦解するときもある。

 そして、かいがいしく飼い猫の「ひじき」と「もずく」の遊びに付き合ったり、冷酷に机上から強制退去の実力行使を行ったりする。

 文章を書きながら、これは「好きなこと」なのか「嫌いなこと」なのかという疑問がわたしを惑わす。すると、
「好きではない」けれど、「やりたいこと」ではあるという結論が導き出される。

「好きなこと」と「やりたいこと」はイコールではないと、あらためて思い知らされながら、会社を経営していくことと、作品を生み出していくことはまさにこの関係で、これでうまくバランスが取れているのだろうななどと納得する。

 そして先日、「好きでもない」し「やりたくもない」ことに人生の多くのエネルギーを使ってきたのではないかという漠然とした考えに至る。
 なんでもコロナウイルスのせいにするのはよくないが、ウイルスがわたしの人生観に少なからず影響を与えたのは事実だ。
 「好きなこと」のためには、「やりたくないこと」もしなくてはならないというのは、生きとし生けるものの道理であるような気がするのだけれど、「好きでもなく、やりたくもない」ことはもう終わりにしたい、そんな心持ちになった。

 しかも、もともとそうすることに、実はなんの障害もなかったのではないかということに気づいて呆然とする。
 そして猫の「ひじき」が、
「おれがいつも言ってるだろう?」
と、自分のかぎ尻尾をわたしに鼻先に擦り付けてくるのである。

 

 


同じ連載記事