真夜中猫との対話 ――編集ダイアリー2020年6月14日


「玄関開けたら奴がいる」

 今日のお出ましは我が家の飼い猫「ひじき」だ。

 我が家にはオスのキジトラ兄弟猫が2匹いる。今年で12歳になった。
 尻尾の長いのが「もずく」、短いのが「ひじき」だ。

 深夜に帰って来ると、うれしいことにたいてい2匹のどちらかが出迎えてくれる。
 
 車の音か、足音を察知しているのか、おおむね玄関のドアを開けると2階から「ドドドッ!」という音とともに階段を走り降りて現れ、何食わぬ顔で目の前の廊下を横切っていくか、玄関の框のところにちょこんと座り、わたしの顔をじっと眺めているかのどちらかだ。

 昨晩は少々手荒なタイプの「ひじき」が出迎えてくれた。
 柱にスリスリ攻撃を仕掛けながら視線はわたしの目をとらえて離さない、そんな深夜2時。
 物欲しげな目だ。

 理由はカリカリご飯がほしいか、それとも構ってほしいかのどちらかだ。
 「ひじき」はわたしが寝る準備をするまでの間、ずっと後を付けてくる。
 (ちなみに「もずく」はソファやジュータンの上で、遠くからずっと物欲しげな目でわたしを見つめていることが多い)
 
 ようやく今日1日の処理が終わり、ウイスキーのグラスを片手に相手をしてやる。
 腰骨のあたりをトントンしてやり、あごの下をなで、お腹をさする。
 静まり返ったリビングにひじきの「ゴロゴロ」という喉を鳴らす声だけが低く響く。

 きまって最後は、本人は甘噛みのつもりだろうが、とてもそのようには思えない彼の噛みつきとケリの道具にわたしはなっているのだ。

 彼らがどんなことを考えているのか、まじめに知りたいと思いあぐねる時がある。
 カリカリが欲しいのか、スキンシップを図りたいのか、もっと伝えたい何かがあるのか。
 
 真夜中に1人と1匹。わたしはその瞳の奥をじっと見つめる。
 彼らもじっと見つめる。
 
 ぼそっと、そのうち何か言うかもしれない。

 

 


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