土日は猫たちが朝から元気だ。
この2日間は彼らにとっては、いつも以上に構ってもらえると分かっているらしい。
週末に限らず、そんな一日も必ずある日課から始まる。
土曜日の今朝も、階段を降りると「ひじき」が待っていた。
ドアや柱に顔をこすらせながら、一瞬、上目づかいにわたしをじっと見つめる。
「おはよう」と言いながら、ちょっと意地悪して素通りする。ひじきはその後ろをずっと付いてくる。
わたしは立ち止まり、ふたたびひじきの顔を見る。
やっぱり顔をあちこちにこすらせて、再び上目づかいにわたしを見つめる。
もういちど「おはよう」と言い、じいっと目を見る。間をおいて、
「にゃあ」とひじきが返事をする。
鼻筋をなでてやると、前歯と牙を「にっ」と出しながら目をつぶり気持ちよさそうにする。
それから、わたしはジュータン敷きの通称「図書室」へ赴き、部屋の端に胡坐をかく。
すると付いてきたひじきがわたしの周りを反時計回りに1周回り、2周を回ったところで伸びをして、右の太ももの先にお尻を向けてどしんと横になる。ひじきの腰にわたしの右手の先がちょうど当たる辺りに。
わたしは叩く。ひじきの腰骨をトントン叩く。気持ちよさそうな表情を浮かべるひじき。
何もかも予定通りである。
ときどきわざと手を休めると、短い尻尾を思いきり「バンバン」と床にたたきつけ、それからわたしの顔を凝視する。
「さぼらない」
右側面に満足すると、今度は寝返りを打って左側を向く。彼は横を向いたまま表情一つ変えない。「どうぞ、お早く」
わたしは休まずがんばって叩く。すると、ひじきがにわかに狩りを楽しむときの表情に変わる。こうなったら気を付けないといけない。うっかりするとわたしの手が、獲物を捕らえようとして繰り出される前腕に隠されたひじきの鋭い爪で、「血まみれ」になる危険がある。
わたしはその危険を承知で、パッとフェイントを効かせながら手を伸ばしてお腹をくすぐってやる。
だんだんそれにもお互い飽きてくると、わたしはひじきの頭をなで、ひげ袋をなで、あごをなでて、
「終わり!」
と宣言する。すると、ひじきは立ち上がって食卓に赴き、猫草をしゃりしゃりと音を言わせて食べ、カリカリを食した後、何事もなかったかのように、図書室の窓のそばの定位置に寝転がって景色を眺める。
今日も明日も明後日も、この日課は変わらないと思っている。両方とも。
そして互いを元気づけている。