眠るように本を読む ――編集ダイアリー2020年6月30日


 昨夜はバスの仕事が終わり、今日は乗務員同士の話の輪に入るのはじっとがまんして(じつはいちばん楽しいひと時でもあるのだ!)、脇目も振らずに家に帰り、着替えてせんべいを食べ、もずくとひじきの相手も早々に布団に入り、本を広げる。

 ベッドに潜り込み、久しぶりに本を広げる喜び。
 先々月くらいからまた読み始めたヘルマン・ヘッセの「デミアン」がなかなか進まないことに苛立ちを覚えていたことを自覚して、なんとしても読もうと思い立ったのだ。

 昨日の編集ダイアリーで書いた通り、スマホを見続ける悪業をきっぱりと退け、本を開く。
 何度も読んだ本だけれど、読むたびに受ける印象が違うのは自分の変化の証でもあるし、それを気づかせてくれるのは再読の醍醐味でもある。

 しかしものの15分としないうちに、行間を追う目が正常に作用しなくなり、あれよあれよという間に意識が遠のいていった。

 朝、目が覚めると、外は嵐。
 けれどもとても穏やかな心持ちなのはやはり夜の過ごし方の結果なのだろうか。
 それとも無事、決算が終わったからなのか。

 しかしわたしにとってはヘッセほど、読むときの心構えを求められる本はないなあと、いつも思いながら、今夜はどこまで辿り着けるか、不安でもあるし、楽しみでもある。

 

 


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