バスの仕事を終えて家に戻ると、夜中の2時。
着替えてから家族を起こさないよう書斎で仕事をしていると、開け放したドアのそばで「にゃっ」
という声がした。
飼い猫のひじきだった。
わたしのところまでやってくると、椅子の隣にあるベンチに乗り、爪を立てた腕をわたしの右肩に乗せ、ぎゅっと力を込めた後、再び「にゃあ」と言って寝室に去っていった。
なんだかひじきに、
「お帰り」
「早く寝ろ」
と言われているような気がして、不思議な気持ちになる。
大正から昭和初期に活躍した画家の木村荘八は、真夜中に唯一付き合ってくれるのは猫だけだと随筆にしたためている。彼の飼い猫はご相伴だが、うちの猫はたぶん違う。
きっと、化け猫で飼い主だ。
感謝。