身勝手な生き物 ――編集ダイアリー2020年7月24日


 今日は久しぶりに妻と都内へ出かけた。

 原稿作成に2日間はかかるかと思っていたのだが、昨日のうちに土曜日の勉強会用の原稿はすべて出来上がっていたので、明日のためにものんびりしようと思ったのだ。

 ニュースでは4連休の外出をできるだけ控えるようにとのことだったので電車もかなり空いている。
 向かった先は浜松町にある「港区立エコプラザ」。ここで開催中の御蔵島(みくらじま)の「森ネコ」という保護猫の写真展の案内をもらっていたのだ。

 御蔵島の名前はなんとなく聞いたことがあったのだが、場所はよく知らなかった。
 れっきとした東京都に属する島である。東京からおよそ200キロ、三宅島のやや下にある。イルカウォッチングで有名な島だという。
 そして、世界でも有数の「オオミズナキドリ」という渡り鳥の繁殖地なのだそうだ。

 この猫とオオミズナキドリとはとても深い関係があった。
 じつはこの鳥は、羽をはばたかせて飛び立つことができない。崖や木に登り、滑走することで飛ぶことしかできないのだそうだ。
 羽を広げた大きさは1メートル20センチ程度と大きい。動きが鈍いので人間でも素手で捕まえることができるそうだ。
 そこで問題になるのが猫なのである。
 この島にかつて飼い猫として連れられてきた猫が野生化して、このオオミズナキドリを捕食し、絶滅の危機にあるこの鳥の問題をさらに大きくしているというのだ。
 今回の写真展は、自然豊かな場所で暮らす猫をたちのためではなく、絶滅問題を解決する手立ての一環だったのだ。

 現在では里親活動が功を奏して、また地域の理解も深まり野猫は200匹近くまで減少したそうだが、この鳥は1年に一つの卵しか孵さないそうで、まだまだ脅威だ。
 しかも、ほかにもカラスの攻撃や人工物への衝突、マイクロプラスチック誤飲などの減少要因もあって、その数が元に戻るまでには多くの危機を乗り越えていかなければならないという。

 猫を初めに持ち込んだ住民も、こんな問題が起きるなどと予想もしていなかっただろうし、野生化した猫も人間が捨てたわけではないのかもしれないが、鳥の天敵がいなかった島に身近な動物がやってくることでその生態系が簡単に狂ってしまうということを学ぶいい機会となった。

 最近テレビやネットをはじめ、学説的にも猫は世界でもっとも凶悪なハンターであると言われ始めた。
 けれども、人間の方がよっぽど身勝手で凶悪だろうと自分は信じて疑わないのだが。

 

 


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