意外な共通点 ――編集ダイアリー2020年7月25日


 いちばん長い日が終わった。

 絵本勉強会の講師が無事終わった。
 無事にと言っていいのかどうか。

 本づくりのテーマは自分の中に根付いたものからしか生まれることはないということをわたしなりの方法でお伝えしたかったのだが、うまく話せただろうか。
 自分の話しが聞き手の役になったかどうか考えるだけで恐縮してしまう。
 でも、やるだけのことはやったのだ。もう考えないようにしよう――そう自分に言い聞かせる。

 人に伝えることの難しさを実感する一方で、伝えることの喜びを味わうことができたことは何にも代えがたい出来事だった。
 そして昔、音楽を志して音楽学校に通っていた時に味わった緊張感を思い出した。
 ステージに上がり、ずらりと並んだ審査の先生とクラスメイトが見つめる中で行われた声楽とピアノの試験。今にして思えば、若い時の方がよっぽど度胸があったのだと感心する。

 ちょっと待てよ。この感覚はいつも味わっているような気がするぞ……と膝を打った。
 わたしにとってはまさにバスの運転も同じことなのだ。
 乗客の視線を背中に一身に浴びてバスを運転する。ブレーキやアクセルの挙動どころかすべて見られている。
 プロとして見られている以上、プロの姿勢と技を見せなければならない。緊張する。でも、それが楽しいし、やりがいにつながっているのだ。

 そう考えたら、言葉や音で伝えることができないバスの運転の方がよっぽど難易度が高いではないか。

 

 


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