パソコン社員 ――編集ダイアリー2020年7月29日


 ようやくいらしたパソコンを開梱した。

 ドキドキワクワクしながらケーブル類を接続し、電源スイッチを入れる。ちゃんとつきましたね。
 素晴らしく、速い。

 旅と思索社では、これまで自宅と事務所で計3台のパソコンを使ってきた。すべて現役だ。
 1台目は家のデスクトップPC。自作パソコンである。
 自作といってもパソコンは全て規格化されていて、その規格に合うパーツを組み合わせることで自分の好みの性能のパソコンに仕上げることができる。パーツや動作させるためのドライバソフトなど、組み合わせの相性が悪いと動作しないなどの問題もあるが、DIY好きな人間ならとても一度はチャレンジしてみる価値がある。

 何気なく自作の記録を調べてみたらなんと2010年の正月に組み立ていたことが判明した。10年前のご老体である。
 しかし、それなりに高いパーツを使ったからだろうか、未だに大きなトラブルは起きていない。
 これまでの大きな改修といえば、速さを求めてHDDをSSDに換装したこと、昨年、冷却ファンが逝ってしまったグラフィックボードを交換したことぐらい。
 いまだにバリバリの現役で、速さの不満もあまりない。

 2台目は会社の設立に合わせて買った富士通のノートPC。20万前後したハイスペックマシンである。資本金の現物出資にも入っている。今でもいちおう現役なのだが、ときどきおかしくなる。
 ここ数年来の大問題は、パソコンに指を触れた途端に電源が落ちてしまうことである。どうも冬場の静電気がいけないらしい。
 原因を探ったが未だに解決できていない。ただ冬場に、「今日は乾燥してるなあ」と感じる時に決まって症状が出る。
 だから、パソコンに近づく前にスチールデスクに触れて放電し、それからおそるおそるパソコンにタッチする。
 それを忘れた日には出来上がった仕事を一からやり直すという辛酸を舐めることになる――そんな理由ですっかり心が離れてしまった。

 3台目は4年ほど前に買ったNECモバイルノートPC。
 前述のノートPCの「電源勝手に落ちる現象」の原因が分からないことに不安といらだちを覚え、何かあったときのためにと予備で買ったものだが、とにかく軽くて速い。
 900グラム弱だからリュック型のバッグに入れっぱなしにして、ヘビーに使っていたら、マグネシウム製の底板がぱっくりと口を開いてしまい修理、永久謹慎処分となり、昨年秋からは湯島の事務所専用機として活躍している。しかし可搬性を追求したパソコン。キーストロークが短く、ミスタッチ頻発で仕事の効率が非常に悪くてストレスがたまっていた。
 さらにストレスになってきたのが、老眼。悲しいかな、ノートPCでは字がほんとうに読みづらくなった。小さすぎて。
 それで思い切ってパソコンをもう一台新調することにしたのだ。
 4台目社員の誕生である。

 そこで考えたのは、買うのではなくリースという選択。
 自宅のパソコンのような10年選手もいるけれど、きわめて珍しい。やはり仕事用にノントラブルで安定して使うには長くても6年程度が限度のような気がする。
 さらにその期間に、満足できる性能を発揮して活躍してもらうためにはやはり高スペックのハイエンドマシンが必要だ。先に紹介したノートPCはすべてi7というCPUを搭載したハイエンドマシン。だから今でも現役なのだ。

 そういう条件を含めると、デスクトップでも1台20万円程度は覚悟しなければならない。結構な出費である。それならリースで定額を支払い、5年ごとにハイエンドな機種を入れ替えて、常にストレスフリーで仕事ができる環境を維持することが重要だと考えるようになった。
 仕事で酷使されるパソコンは消耗品だ。どんなに高い値段で買っても、いずれはシステムファイルが増大して速度低下が起きたり、ハードのトラブルが増えてくるが、たいていは突然起こるものだ。
 購入したパソコンはどうしても元以上を取りたくなるから、使えるならとそのまま使い続けてしまう。それである朝、急にパソコンがうんともすんとも言わなくなる。
 デスクトップ制作がすっかり常識になってしまった今の時代では仕事にならない。大袈裟ではなくそれによって経営危機に直面する可能性だってあるのだ。

 パソコン依存が強いのは決していいことばかりだとは思えないけれど、ひとり会社では極めて有能で大切な一人の社員なのである。

 それを考えたら、4200円のリース月給では申し訳ないくらいである。
 5年間必死に働いてほしい。わたしも働きますので。

 

 


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