道草志向 ――編集ダイアリー2020年7月30日


 徐々に自分のペースで仕事ができるようになってきた。

 自分の事務所はできたものの、受託業務が中心だった。だからほとんどお客さまの事務所で仕事をすることが多く、正直ずっともやもやした気持ちだったのだけれど、あらかたの引き継ぎが終わり、行く必要がようやく減る。

 今後は書籍の編集と取次交渉のみをお手伝いすることになり、自分の事務所がメインの仕事場になる。会社創業以来初めてのことである。

 パソコンの設定もほぼ終わり、提出が遅れていた社会保険と年金の掛金算定に必要な月額報酬の報告も終わった。
 ひとまずほっと胸をなで下ろす。
 さて、次は何をしよう?

 出てくるわ出てくるわ雑用の嵐。
 気がつけば雑用だけが目の前にある。そして途方に暮れる。

 手付かずの雑用をリストアップしてみようかと思ったけれど、そら恐ろしくなったのでやめた。

 いずれにしても最優先はTabistoryの運営とリニューアル計画の推進、「出発点」の開店準備である。
 いずれも今後の旅と思索社の将来を創る大事な取り組みだから疎かにはできない。

 そしてそこには終わりがない。
 そういうことと、日々の雑務も併せてこなすのはバランス感覚がいる。
 雑務ももちろん手は抜けないが、創造力が必要な作業の前では都合のいい逃げ道になる。

 昔、アイデアが出ない時はひたすら単純作業を行い、気持ちを切り替えてアイデアをうまく引き出す先輩がいた。
 わたしもそういうことができればいいのだけれど、気がつけば単純作業を極めようという意識になってしまい、いつも藪蛇となって本筋に戻れなくなるのだ。

 そして、いまこの文章を書いていて、思い当たる。
 ああ、これは自分の道草人生そのものではないかと。

 自分のペースは道草ありきで考えたい。

 

 


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