お店は大事な体の一部


もともと散歩も好きなのですが、酒飲みなので大通りより商店街の裏の路地に潜り込んでいくわけです。
小さな飲み屋横丁なんかが大好きで探検するのですが、やはり多少の危険は感じるわけです。知らない街ですからね。
したがってお店の営業している暗くなった時間をさけて、昼間に歩くわけなんです。のれんは出ていませんが看板はちゃんとあります。面白い名前が多いのです。どんなママさんがやっているんだろう? どうしてこんな名前にしたんだろう? 自分の名前なのか、出身地なのか?
お店の名前はいろいろです。いちいち中に入ってお酒を飲みながら話を聞くわけにもいきませんので、そっと写真だけ取らせていただきます。
今回は人の体の一部分をテーマに集めてみました。

 

 

記念すべき一枚目は新橋の立ち飲み店「へそ」。たぶんほかの意味ではないと思うのでお腹の「へそ」のことだと思いますね? なかなかありそうで命名するには勇気がいりそうです。

 

 

二枚目でもうこじつけです、渋谷の「はな」。すみません、これは花だとは思います、でもせっかくひらがななので「鼻」にしましょう。私は花や庭のデザインなどが本業なので植物に関する名前には興味を持っています。そのうちに花の名前だけでもひとつコーナーを作ってみたいと思います。花の名前の店は多いですからね。

 

 

三枚目はその鼻の横にありそうな「ほくろ」。高円寺で見つけました。場所によってはかなりのインパクトを他人に与えるほくろですが、このお店はたぶんかなり色っぽいほくろをもったママさんがいらっしゃるスナックだと思います。

 

 

四枚目の「かいな」。これは大田区・下丸子で見つけました。治療院ですからマッサージをやっていらっしゃるんだと思います。「かいな」ですから腕ですね? 広辞苑を引いてみますと「かいな」とは肩から肘までの二の腕と、肩から手首までの間の二通りの意味があるようです。かなり腕に自慢の先生がやっていらっしゃるんだと思います。「かいな」は相撲の技でよく名前が出てきますが、古い日本語だと思います。私は岩手県の出身なので、腕のことを「かいな」がなまって「けな」といいます。したがってこの名前にはより親しみを感じるわけです。

 

 

五枚目「あんよ」。赤ちゃん言葉になってしまいましたがいい名前ですね。「あんよ」がふらふらになる前に帰りましょうねっていう意味もありそうですが……ここは新宿のゴールデン街ですからね。大丈夫、朝まで飲んでいてもいいお店だと思います。変わった名前の多いゴールデン街です。カメラでの撮影もなかなかできない街なので、いつも散歩するときは昼前に行っています。

 

 

六枚目「あんよ」の上になりますが「おまた」ですね。池袋の西口の飲食店街で見つけました。おそらく小俣さんなのかとは思いますが、そこいらへんの面白さも考えての命名じゃないでしょうか? かなりユーモアのある方が周りにいらっしゃったのだと思います。この池袋も40年前は怖くてあまり近づきたくなかったところですが、名画座の殿堂「文芸坐」には毎週通っていました。あのころカメラを持っていたらいい写真がいっぱい撮れていたろうなと、今も口惜しく思います。

 

 

最後の七枚目ですが、「おまた」のあたりをさしているのかもしれませんが、詳しい場所は不明の「あそこ」です。「あっち」とか「こっち」ではないので、たぶん「あそこ」を指していると思われます。店をやっているのはかなりの人物と思われます。北品川で見つけましたが、店の場所を説明するときはややこしそうです。

結構きょろきょろして面白そうな看板を探すのですが、面白いにもさまざまあって、範囲も広いので、「おっ」と思ったものは写真を撮ります。そして家に帰ってから様々なジャンルで分類します。
たくさん貯めてしまうとかなり面倒なことになるので、散歩のつど整理をするようにしています。しかしこの体の部分の名前はありそうでめったに出会わない名前です。「えくぼ」とか「ほっぺ」とかはありそうですが。
とにかく、出会った時がそのタイミングですから、逃さないように集めていきたいと思います。どんな人がやっているんだろうな? どんなお客さんが来るんだろうな? と想像をしながら……。


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