壁を這うエントツ


何か落ちていないか、面白いものはないかと下を見たり、上を見たりきょろきょろと忙しいのですが、都会を歩いているとエントツも好きなんですね。
どんと直立した銭湯や造り酒屋さんのコンクリートやレンガのエントツも素敵ですが、繁華街でみられる建築屋さんやお店屋さんが苦労したであろう、エントツの姿に感動すら覚える時があります。排煙の機能と近所迷惑を考え工夫されたエントツはすごいですね!
最近は突然と隣が駐車場になったりする都会ですから、油断はできません。今まで隠れていた壁やエントツがあからさまになってしまいます。他人からするとまるでそこの建物の恥部を見るような、裏側をのぞくような、見てはならないものを見ることができた感激や発見があるのです。
いったいどうやってこのエントツたちを壁に這わせたんでしょうか? まるで動物の血管のように、植物の葉脈のように壁を這い登る姿はとても美しいものがあります。

 

くねくねと曲がる銀座のエントツ

さすがに銀座ですね。地価の高いところですからとなり戸の隙間はほとんどないのでしょう。それでも排煙用のエントツだけは外に出さなくてはならなかったのでしょうね? 工事屋さんも苦労したことでしょう。
このビルにはいったい何軒のテナントが入っているかは不明ですが、それぞれ専用のエントツが必要だったんでしょう。排煙設備がなくては営業できないし、都会は大変ですね。
窓も見えますが、窓としてはあまり使われていないようです。でもその窓をさけるようにくねくねと曲がる姿は、植物というよりは原始的な動物が壁を這っているようにも見えます。かなり薄っぺらなエントツで六階以上まで排煙するわけですから、なにかファンのような強制的に吐き出す設備もあるのかもしれません。

 

機能美をもった藤沢のエントツ

これは神奈川県は藤沢で見つけましたが、たぶんここも駐車場になったおかげで出現した光景だと思います。中央に集められてスラーっとまっすぐ伸びたエントツが綺麗ですね。右の一本は別にして、シンメトリーにならないのが人間らしい、なかなか素直な機能美をもった壁とエントツです。

 

椅子を重ねているような新橋のエントツ

ごちゃごちゃした街並み、有名なオヤジの聖地として飲食店がひしめきあう新橋です。おとなりとの隙間のほとんどない場所で、このエントツは厚みもあるのでこの撮影した場所は建築時は空いていたんでしょうか? ゆとりが何となく感じられるエントツ群です。左から右に向かって少しずつ小さくなって、まるで椅子を重ねているように見えます。

 

屋上が気になる赤羽のエントツ

これは北区赤羽、この町も飲食店の多いところ。太いエントツです。お店のいっぱい入った雑居ビルですね。屋上はどうなっているのか気になるところです。かなりの量の煙が集まって出てくるのだとおもいます。

 

壁を埋め尽くす湯島のエントツ

湯島のあまり高くないビルですが、かなり薄っぺらいエントツの集合体です。幅広のエントツで埋め尽くされ、壁一面がエントツになってしまいました。

 

堂々とした西神田のエントツ

西神田のエントツですが、これは太く立派な一本のぐにゃぐにゃ曲がったエントツです。壁の二か所の傾斜に合わせて這うように上っていきます。これはかなり強制的に排煙しないと、煙が上って行かないでしょう。たぶん送風機が付けられていると思いますが、それでも堂々とした一本エントツです。

 

置いてけぼりを食らったようなエントツ

このビルもこちらには同じような建物が建っていたんでしょうね。それがなくなって、今まで気にしていなかった壁の汚れも公開されてしまいました。真ん中にへばりついているエントツがまるで体に付いたヒルのようで、いいでしょう? 上までいかずに途中で曲げられ、雨が入ってこないようになっています。さび方も調度よさげで美しい。まるで置いてけぼりを食らったような、「それでも一生懸命頑張っているんだぞ」っていうエントツです。

このように都会の散歩は今まで行ったところでも、たまにのぞいてみると思わぬ発見があるものです。何が面白いかは人それぞれですから、自分で面白いと思ったものは、コレクションしていきましょう。空き地にまたビルが建ったらもう見ることはできませんよ。


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