街歩きの一つの目的である、面白いエントツ探しで上を見たり、ビルとビルの隙間を覗いたり、裏に回ってみたりと、あいかわらず不審者と言われれば不審者なのである。エントツというのは生活感そのもので、機能以外の何物でもないようだが、それなりに歴史ある建物や趣のある家にはやはりそれに似合った立派なエントツがついているのである。
近頃再ブームの薪ストーブとなると、安いものは毎年付け替えなくてはならなくなるが、外国製の何十万もするような、鋳物のストーブとなると、エントツもそれなりに耐久性のある高価なものになる。私が生まれ育った家では、薪ストーブもエントツも毎年錆びてしまって買い替える、安いブリキのストーブだった。
けれども、上がT字になったブリキのエントツは都会ではめっきり見なくなってしまった。やはり都会では、燃焼を助けるエントツより排煙用のダクトが主である。
そのダクトは、機能性のみの建物に付随したおまけのような、コバンザメのような、一見すると邪魔者のような、後から付けた感でいっぱいで、なんとなくかわいそうに思えるのである。
だからといってお情けで写真を撮っているわけでは毛頭なく、頑張っている姿に感動さえ覚える、なんでもコレクターなのである。
今回は何とも微笑ましいエントツの家族とご夫婦の代表を集めてみました。
十条の焼肉屋さんである。店内に入ることはないので想像でしかないのだが、これはたぶん、お客さんの服に臭いが着くからと嫌われっぱなしの煙を吸い込んでくれているのだろう。テーブルの数は7テーブル、各テーブルの焼肉の台の上にあるダクトが集められているのだ。
各自がそれぞれ仕事を全うするようにできている、見事といえば見事なエントツ群なのです。仲の良い家族が一丸となって働いているであろうほほえましい一家の姿である。
これもまた素晴らしい家族写真でしょう? 西池袋のクリーニング屋さんです。
塩ビのパイプのようですが、働いている内容はわかりません。一本だとまるで太めの、昔の汲み取りトイレの脱臭用のエントツのようですが、違いますよね?トップのところが少しバラついている気もしますが、それ以外のところは完ぺきな幸せ家族です。まぁ、4人組のコーラスグループといえばそうかもしれません、きれいなハーモニーが聞こえてきそうです。
田町のこちらも焼肉屋さんです。みんな椅子に腰かけて、さらに腰かけて、さらに腰かけて……と、みごとに全員一つの椅子に腰かけることができたというところでしょう。
お父さんの膝の上に子どもを抱っこしている図でしょうか? 子ども多すぎて、お父さんの膝も細くなってしまったようです、しかも一番上に腰かけた末っ子が太りすぎです。まぁ、でもみんな働くようになったんだから良しとしますか。頑張ってください。
ここからは、頑張り屋の御夫婦たちに登場していただきます。
一番目は、ふたりとも体格の良い、大森の御夫婦。毎日太陽のもと、汗水たらして頑張ってきた涙ぐましい姿に見えます。
思わず見ているこちらも、他人事ながら、これからは楽しく老後をお過ごしくださいと、願わずにはいられない。きっと立派な子どもたちも育てたんでしょうね。
ご苦労様……は、変ですね、まだまだ現役の御夫婦です。
荻窪のこちらのカップルは仲良くというか、どちらかがちょっと疲れたのでしょうか、おんぶしているようです。
おんぶしている太い方が旦那さんと見る方がいいのでしょうね? おんぶされている奥さんも幸せそうです。夫唱婦随のほほえましい姿です。見習いたいものです。
年老いた母を何度かおんぶした経験もありますが、他人に見られると何となく恥ずかしいような、少し親孝行を見られて自慢でもあったり、複雑な気分だったことを思い出します。回数は少なくとも、母をおんぶできたことを幸運にも思える今日この頃です。
そういえば、近頃のお母さんは背中に赤ちゃんをおんぶしませんから、将来はどうなるんでしょう? 想像したくないですね。自分の年老いた母親を胸に抱っこする姿は……。
市ヶ谷のビルにいましたご夫婦です。近所で生まれ育った幼馴染同士が、初恋からそのまま結ばれて結婚、順調に伸びまして、銀婚式を迎えたころ転勤(屋上でガクッと曲がった辺りが転機)、単身赴任することなく仲良く地方に移住。幸せに定年を迎えましたって、感じかな……?
逆にこちらの御夫婦は一応上司の勧めで大会社に勤めるエリートサラリーマンと結婚したものの、どうしたものか最初から気が合わず、表向きは仲がよさそうでも、家に帰るとお互いにそっぽを向いて、話すこともなく、目を合わせることもない。冷たい空気の流れる夫婦生活が想像されます。
イケメンと美人さんのどうみてもお似合いのカップルなのですが、他人にはわからない夫婦の秘密があるのです……。