危険! 近づいてはいけません!?


 身の安全のため、飲み屋横丁を撮影しに行くのは日中にしています。
 半分冗談でちょっと大げさですが、お店が営業中は客引きや、その辺りを行きかう住民のみなさん、飲みに来たお客さんのこともありますので、今の時代、自分が訪れた店以外の撮影はしないようにしています。

 もっとも、初めから新宿ゴールデン街など撮影を禁止している街もあります。個人用に撮影する場合はいいのかもしれませんが、飲んでいる姿、仕事をしているところを撮影されるのを嫌う人は多いので、自分撮りだといっても背景に写る場合もありますから、やはり余計なトラブルを避けるためには控えた方がいいでしょうね、とはいいつつ、記録用にと私は数枚、人を入れずに撮ったりしますが……やめましょうね!

 朝の飲み屋街は大丈夫でしょう! 店の前に出してある看板の撮影ですから……というものの、自分の都合で、許可をもらったわけでもなく、ましてや朝まで営業している店もあるし、朝から営業を始める店もある。酔っ払いや朝帰りの客もいて、やはり遠慮気味の盗撮風になってしまったりする。
 声をかけられないよう、注意されないよう、すきを見せないよう、怖そうな顔をして、何の気なしにぱちりと気になる看板を撮影させていただきます。記録でもありますが、デザインの勉強でもあるのです。

 やや危険を感じながらでありますが、今回は店の名前そのものが危険なのであります。まあ、それなりに意味があってつけた名前でありますから良いのですが、やはり一見さんは入れないだろうなあ? よっぽど酔っぱらっていない限り……。かといって、怖い名前だから怖い兄ちゃんが出てきてボッタくる店なのだろうかというと、それは一切わからない。責任は負いかねますからご注意ください。

 

 

高田馬場の「てっぽう」

 ご存じホルモンの部位の名前ですが、地方によって腸の場所が違ったりします。直腸をその形から「てっぽう」と呼ぶ例が多いようです。
 鉄砲が伝来する前は、何と呼んでいたのかと思ったりしましたが、その時代は一部の人しか四つ足の獣の肉は食べていないだろうし、まして内臓となるともっと少ないと思いますから、部位に名前を付けるということはなかったのでしょうね。

 

高円寺の「バクダン」

 このバクダンも、テッポウとは親密な関係にありますね。焼酎とホルモンの関係が深まったのは戦後でしょうか? 半島出身の人たちが戦後食糧難のころ、仕事の後、七輪を囲みホルモンを食べながら、マッコリや焼酎を飲み、力をつけていたといいます。その元気の秘訣を日本人もまねて食べるようになったとか……。
 バクダンも30°の焼酎をそう呼んでいたという説があり、今でもその強さから、25°とはっきり区別しているところがありますね。30°のストレート爆弾の威力は強烈です。

 

小石川の魚雷

 店の入り口の上に3メートルはあろうかという魚雷を乗っけております。ここはラーメン屋さんのようです。こういうの大好きなのです。
 当然のことながら張子の魚雷です。私も作って飾りたいのですが、こういうのはお店だからできることですよね? 普通の家でやっていたら、危険人物として通報されてしまいます。これほど大きな魚雷はまだ無理なので、先日、私は全長60センチほどのバクダンの模型を手作りしましたが、誤解されないように隠すのにも神経を使いました。
 大きなプラモデルなわけなのですが、こういう冗談が冗談として認知される平和な世界になってくれることを望んでいます。
 

 

横須賀の空母「信濃」

 基地の町、軍港の町横須賀ならではですが、第二次大戦時の日本海軍の大型空母「信濃」という名前の居酒屋さんです。当時、軍艦などは各地方の山や川の名前、昔の国の名前などが各クラスに分けられて命名されていました。
 「信濃」ですから、空母のシルエットが描かれていなければなんともほのぼのした長野県かな? 地方色豊かな良い名前なのですが、大戦で多くの攻撃に参戦し、先に出てきた魚雷や爆弾で攻撃された空母ですから、一応危険な名前のジャンルに入れさせていただきました。

 

ゴールデン街の「虎の穴」

 プロレスといえばタイガーマスクを思い出す人も多いでしょう。大分お年は上の方々になっているかもしれませんが、孤児院の少年たちのヒーローになって大活躍する漫画「タイガーマスク」、人気がありましたね。
 アニメになり、その後そっくりのタイガーマスクが本当のリングに上がったときは驚きましたね! その漫画に出てくるレスラー養成所が「虎の穴」でしたよね。とにかく地獄のような厳しい訓練で鍛える虎の穴は、さまざまな業界でも怖いところの代名詞になりました。

 

新宿歌舞伎町の「ブラックホール」

 世界有数の繁華街・歌舞伎町。数えきれない数の飲食店や遊ぶお店がひしめき、眠ることを知らない、多くの人が国内外から訪れる町であります。そのなかの「ブラックホール」ですから危険だと思いますよ!
 「ブラックホール」は何度も宇宙の入門書を読んで、分かったような気がするものの、でも結局理屈が理解できない。想像できないのですが、SF映画を見れば「あーあるんだな」ということだけはわかります。地球も呑みこまれたらどうしようといらぬ心配をしてしまいます。

 

十条「ようがんや」

 その将来が不安な地球の火山から吹き出す溶岩を店名にしているたこ焼き屋さんです。ひらがなで書かれていますが、イラストはまさに噴火中の火山であります。
 今年も日本各地で火山の活動が活発になり心配ですね。もともと日本列島が火山の上というか、火山の中にあるわけですから、地球の歴史の中でいえばいつどこの山が爆発しても当たり前なのだと思います。
 火山がちょっと休んでいる間の何千年かの間に、こうして多くの人間が活動し歴史や文化を築いたのでしょうが、いつかはまた昔のような地球に帰るのかもしれません。自然は人間の手でどうにかなることもあるが、ならないことの方がいっぱいあるのだということも覚悟しておかなくてはならないと思います。

 

 

下北沢の「電気クラゲ」

 地球に生息する多くの生物の中にはやはり危険な生物もいるわけで、最後は「電気クラゲ」であります。世界中の海には多くのクラゲがいるそうですが、怖そうですよね「電気クラゲ」!
 アマゾンの方には「電気うなぎ」などもいるそうですが、ちょっとこちらの方が正体不明で海を漂い、泳いでいる人間を長い触手でびりびりっと電気ショックで襲うのでしょうか。怖いですね……。
 毒をもった生物はたくさんいます、蚊・蟻・蜂……植物もたくさんの種類が毒を持っています、その中で毒以外の電気ショックが武器というのは独特ですね! いい意味でのショックをお客さんに与えるようなお店だったら楽しいと思います。

 

 さまざまなパターンの怖そうな、危険そうな店の名前を集めてみましたが、こうした面白半分、いや真面目につけたのかもしれませんが、自由、遊び心こそ世の中には大切なのです。
 世間へ刺激を与える爆弾としていつまでもあり続けてほしいものです。

 


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