笑う門には福来る


 明けましておめでとうございます、なんてもう遅くなってしまいましたかね?

 初めての挨拶でありますから、いつであろうととりあえずお許しを願いたい。神社やお寺さんへの御挨拶も同じでしょう。初詣はいつだってはじめて行ったら初詣であります。
 神様仏様はやさしいから、我々庶民の願い事は聞いてはくれるでしょう? 叶えてくれるかどうかはわかりません。

 神頼みをする人も多いのでしょう、街を歩くと大小様々の神様のお社がそこかしこに見られます。庶民の生活の中に溶け込んでいる証拠ですね。お願いをするためなのか、そまつにすると罰が当たるからなのか。
 神様が自分の家や会社にいらっしゃるということも有難いことなわけで、古くからのお屋敷や会社にもたくさんの社が見られます。

 そんな神様のガードマンが狛犬でしょうか?
 神社のみならずお寺さんにもいらっしゃいます。街を散歩のついでにひと休み……おっと、ついでになんて言ったら罰が当たります。せっかくの出会いですから神社などに寄ってお参りしてみるのもいいですね。

 神社仏閣の歴史や仏像などの由来などの勉強は難しいですが、狛犬さんは見ただけで何となく伝わる物があるので、私は気楽に見学、撮影してきます。

 江戸時代からずっと守っていただいている狛犬さんあり、昭和や平成の新しいタイプのものもあり、なかなか楽しいものです。今回はそんな狛犬さんの写真の中から笑い顔が素敵な狛犬さんを集めてみました。一応犬と名前がついているのだから12匹でいいのかな? お許しください。

 

 

 東京は東向島の牛島神社にいらっしゃる、狛犬さんも「阿吽」というのでしょうか、口を開いたものと閉じたもので一対になっています。どちらかというと口を開いている方が笑っているような気がします。特にここのはいい笑顔ですね、東京でも一二を争う笑顔ではないでしょうか? この変顔タイプの狛犬さんは江戸時代の作品のようです、全国に見られますが、私はこのタイプが大好きです。まるで漫画に出てきそうですが、もしいたとしたらこちらの方が先輩ですからね。

 

 

 

 新宿西向井神社です。立派な富士山もある神社を笑って守っていらっしゃいます。ちょっと顔が平べったい感じのタイプ。大きな牙もりっぱ、髪のカールもちゃんと残っています。

 

 

 

 新宿は市ヶ谷亀ヶ岡八幡さんの狛犬さんです。こちらは頭がたいらで角のようなものはありません。口を閉じていますが、にんまりした感じがいいですね。パーマのかかった長髪も眉毛も立派です。

 

 

 

 こちらは芝の八幡様、口は閉じていますが、さらに口は大きいようで「がははは」と声が聞こえてきそうです。あご髭がカールしています。

 

 

 

 「なにをくだらないことを言っているんだ、おれの方がもっと格好いいぞ、家にもいらっしゃいよ」といってニタニタしていそうなのが同じ芝の大神宮さんです。ほりの深いイケメンタイプ(この中では)でしょうか?

 

 

 

 ちょっとタイプが似ている六本木の天祖神社の狛犬さんです。カールした眉毛も立派、目を細めています、胸板も厚いマッチョな狛犬さん、さすが六本木です。

 

 

 

 深川の富岡八幡さんです、こちらはサングラス? 眼鏡をかけているように見えます。あご髭はまっすぐですね。長い年月で欠けてしまったのか歯がちょっと悪そうですが、いい笑顔ですね。

 

 

 

 調布の天神さんはタイプが違います。口の部分が前にせり出してリアルになっています。でも笑っていますね? 鼻の孔は小さく、目もより細くなっています。体中に生えたコケが歴史を感じさせてくれます。

 

 

 

 東京以外にもこの手の狛犬さんはいらっしゃいます。茨城県下妻の香取神社です。目も鼻も大きく開いています。ガハハと笑った口は青い塗料が残っていますが、昔は派手に彩色されていたのかもしれません。各地に部分的に赤や黄色に色づけされた狛犬さんを見ることがあります。漫画に出てきそうな歯並びです……。

 

 

 

 これも茨城県は竜ケ崎の八坂神社。顔は扁平ですが、大きな目玉は飛び出し、鼻は人のようで穴が見えないタイプです。下顎を突出して笑っています。

 

 

 

 秋田県男鹿半島でも狛犬さんに出会うことができました、白神不動さんです。頭が平らで耳が本当の犬のように大きく垂れています。牙も大きく立派です。ちょっと怪しげな笑い顔です。

 

 

 

 岩手県遠野市の六角牛神社。遠野物語などで有名です。土淵の常堅寺のカッパ狛犬が注目されていますが、こちらも負けてはいません。顔の平らな点では全国の狛犬さんの中でも引けを取らないでしょう。にんまりと笑って、お参りに来る人々を迎えています。

 
 全国各地に石屋さんがいて、お墓や石碑、狛犬さんを掘っているのだと思います。
 想像ですが、京都や江戸の有名な神社仏閣に建てられた狛犬さんを見た人たちが、「この狛犬はいいなぁ、おらの村に帰ったら、今度造ってもらうべ」なんて思った人がいたりして、全国に広まったんじゃないんでしょうかね?
 当時も流行というものがあるはずで、口コミで増えていったのかもしれません。京都の祇園祭に似た踊りが全国にあるように、この笑顔の素敵なユニークな狛犬さんたちも増えていったに違いないのです。
 
 神社側は寄贈されるほうだから、頭の固い宮司さんたちでも、信者の皆さんに「こんなのじゃなくて、もっと立派なものにしてくれ」なんて言うこともできず、「へへへ」と、狛犬さんと似たような薄ら笑いで「ありがとうございます」といったんでしょうか。
 まあ、石屋さんも石屋さんで「いいんですかね、こんなので」なんて半分疑問に思いながらも、「これが京で一番流行っているらしい。ご利益もあるんだっていうから、黙って彫ってくれ」などと頼まれたに違いない。
 そんな遠い昔の人々の楽しくゆとりある暮らしを勝手に想像しながら、お参りと散歩を楽しんでみてはいかがですか?

 鳥居をくぐって、まずはじめに笑顔になれるなんてなんて素敵でしょう。きっとその笑顔が福の神をご自宅まで連れてきてくれるに違いありません。


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