路地裏を覗いてみれば……小窓の周辺


 別に他人の生活を覗いたりする趣味はなく、興味もありませんが、あまり見られることはないだろうと安心しきっている、家の裏や脇の勝手口などなど、意識していないからこその美しさ、面白さがあるような気がします。

 表通りに面する玄関や店の全面は、とりあえず装いますから、掃除もしますし飾りもするわけです。それは都会も田舎も同じことです。しかし狭い都会の事ですから、古い街であればあるほど、個人の住宅などは玄関と勝手口などが表に面していたりする場合があります。

 その勝手口のわきには、台所なのか、ふろ場なのか、トイレなのか? 小窓があり、その近くにはガスや電気のメーターがあり、ポリのゴミ箱があり、自転車が置いてあったりして、生活感が100パーセントなわけです。
 どんな人が住んでいるのかなどなど、プライバシーに関わることはもちろん想像もしませんし、失礼ですから、そんな野暮なことはしません。

 見られることを意識しない、例えば美しさを求めない機械のように、機能だけを追い求めた時に自然に発生する美しさを見るわけです。ヒビの入ったモルタルの壁、錆びたトタン板……美しいでしょう?

 

 

 西池袋。シンメトリーの出窓、窓の下から出た水道のパイプ、青いトタン板、侵入防止の鉄製の窓枠、完ぺきといえるほど無駄のない美しさだと思います。
 

 

 

 浅草橋のお店だったと思います。この何屋さんだったかを記録していないところに私のいい加減さが出ていますが、美しければいいわけです。白と黒のコントラスト、その太いモルタルの縦の格子、すべて白に統一された美しさですね。
 

 

 

 堀切菖蒲園。これも白ですが、トタン板です。白い自転車がいいですね? ここにポリのゴミ箱、掃除道具があれば完璧です。
 

 

 

 赤羽。この低い小窓というのも多く見られます、やはりここでいいのはモルタル壁の下からのコケの生え具合、右下の基礎の辺りの敗れて板張りの見えたところ、そして4個のガスメーターでしょうね? いいです。
 

 

 

 板橋の大山。個人宅でしょうか、何度も塗り重ねられたトタン板、そしてはがれかかった板の壁。そして窓に張られたブルーの虫除けのネット。左側のトタン板の白と青の塗り分け、この家の歴史を感じずにはいられません。
 

 

 

 再び赤羽のお店。横の路地からの一枚。たぶん台車の後ろにはもう一枚の小窓があると思います。左のスチールのボックスは電気でしょうか? いたずら書きが東京らしさを演出しています。ポリのゴミ箱にマジックで店の名前でも入れていてくれればいいんだけどね?
 

 

 

 さすが渋谷です。壁にもメーターにもたくさんの張り紙といたずら書き。たくさんの配線のコード、換気扇、都会ならではの光景だと思います。
 

 

 

 浅草。このモルタル壁に何となく並べて付けられた電気メーターや郵便受け箱、渋谷とは違う下町浅草の住民のゆとりを感じさせる壁です。小窓の下は低い出入り口のドアのようです。
 

 

 

 初めに出てきた西池袋。お店の勝手口のようです。石板の乱張り、大きなガスメーター。防犯の窓の鉄枠がシンプルでいいです。その右わきの小さな出入口、よほど痩せた人でないと出入りは無理ですね?
 

 

 

 上野末広。下町は庭のない家も多いのでしょう、それでも植物に親しむように、通りに面したところにも鉢を並べて植物を育てています。出入り口のガラス戸から出たエントツ、ヒビの入ったモルタルの壁、鉄の窓枠、ちょっと暗く見えますが、生活感が出ていい風景です。
 

 

 

 
 こちらは東池袋。これも低いところに小さなドア、消火器の張り紙、駐輪禁止の張り紙と、その下の堂々の自転車。都会の一風景です。

 人の生活しているところに入っていって撮影するわけです。へたをすると犯罪と思われてしまいます。
 洗濯物や下着が映っていたら大変です。人としてのモラルとエチケットが路地裏散歩者には必要なのです。
 その人にとってはプライベートな、そして普通の生活があるのです。面白さ美しさを感じたとはいえ、失礼にならないようにしなくてはなりません。あまり奥まで入り込んだりしてはいけません。
 これらの写真は公道から撮影しました。すみません。
 しかし、このような普通の生活こそ、貴重な記録になるような気がするのです。


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