ソトノミスト「千石・本駒込」をゆく。


 

 

 

 

 本日のソトノミストは大型連休を利用して、イタリアは地中海のシチリア島にやってきました……。
 なんてことを言ってみたいものなのだが、本当は都営三田線の千石駅を降りて「シシリア食堂」というお店にやって来たのだった。
 ぶらりと寄ったこのお店、ここ文京区エリアでは一番最初にシチリア料理を提供するお店としてオープンされたらしい。屋号がシチリアでなく「シシリア」なのは、それがより現地訛りに近いからなのだそうだ。
 ランチタイムの直前(一番忙しい時間帯です)に押しかけてシェフに無理を言って、ビールとおつまみになりそうなものを持ち帰りでお願いしてみたところ快く引き受けてもらえた。カウンター越しに会話をしながら暫し待たせていただくと、彩り鮮やかなオードブルを簡易容器に用意してくださった!冷えたビールはシチリアの地ビール「Messina」。シェフ、有難うございました!

 

 

 ビールと料理をマイ保冷バッグに入れて店を出る。旧白山通りを白山方面へと歩けば、やがて右手に見えてくる広い敷地に大きな建物群。あれが東洋大学である。

 

 

 

 

 

 

 このキャンパスにある2号館は、低層建築物の多いこの地域にしては珍しく16階建てであるため一際目立つ。図書館と研究室がメインの校舎なのであるが、最上階のスカイホールは各種セミナーやシンポジウム会場としてや、はたまたプロ野球ドラフト指名を受けた選手の会見などで使用されるなど用途は様々。眺望はすこぶる良い。
 東洋大学と言われてソトノミストが思い出すのは2009年の箱根駅伝だ。初の総合優勝を果たした東洋大は、初出場から77年目、67回目の挑戦での総合優勝は最も遅い記録となったのだが、山登りの5区で区間新記録を達成し「山の神」と呼ばれた柏原竜二のあの鬼の形相は今でも記憶に残っている。

 

 

 キャンパスを後にして、「BOUQET」と書かれたお店の脇を歩いていく。「ぼうくえっと?」と声に出して読んでしまったソトノミストであったが、店内のたくさんの花束やアレンジメントが並んでいるのを見て、あれは「ブーケ」と読むのだと気づき、「ぼうくえっと」などと読んだ自分が恥ずかしくなった。

 一方通行の路地を歩きながら、さっきシシリア食堂のシェフが教えてくれた話 ―― 東京都武蔵野市に「吉祥寺」という地名がありますよね? ええそうです、焼鳥いせや総本店のある吉祥寺です(笑)。でもどういう訳か吉祥寺には「吉祥寺」という寺は無いんです。吉祥寺という名の寺はここから歩いてすぐのところにあるんですよ―― を思い出した。なんだかなぞなぞみたいな面白い話だったが、すぐ近くなら行って見てきますと別れたのだった。

 さて、路地を抜けると本郷通りが現れた。本郷通りは、千代田区神田から文京区本郷を抜け、北区滝野川を結ぶ国道である。徳川将軍家が日光東照宮参詣の際に通った街道でもあり、聖橋、湯島聖堂、東大赤門、六義園、旧古河庭園、飛鳥山公園など歴史的、文化的にも見どころの多い通りなのである。

 

 

 通りの向こうに大きな寺の山門が見える。ここが曹洞宗諏訪山吉祥寺。「吉祥寺」という寺は文京区本駒込にあったのだ。
 立てられている説明札を読むといろいろな事が分かった……。

 明暦3年(1657年)、江戸は町の大半が焼失するほどの大火に見舞われた。世に言う明暦の大火である。この大火によって本郷元町(現在の水道橋駅付近)にあった諏訪山吉祥寺の門前町は焼失してしまう。焼け出された門前町の人々は、幕府の斡旋をうけ現在の武蔵野市に移住することとなる。かくして武蔵野台地の新田開発が進められたのだが、吉祥寺への愛着のあった人々が、その新田を吉祥寺村と名付けたのだそうだ。これが地名「吉祥寺」の起こりである。
 なお、本郷元町の諏訪山吉祥寺はといえば、明暦の大火では何とか焼失を免れたが、その後の火事で全焼してしまい、この地に移り現在に至るというわけだ。

 

 

 静寂の中、真っ直ぐに続く参道を歩いていく。本堂の手前はずいぶん広々としている。ここをもし駐車場にしたなら乗用車100台は停められそうだ。
 お寺の歴史に思いを馳せ、お賽銭を供え、合掌する。

 参拝を終えて帰り道、迷惑にならない山門の傍らをお借りして、一人、ささやかにソトノミさせていただきます。
 まずは、苦みが少なくさっぱりしているビールMessinaでノドを潤す。
 シシリア食堂で作ってもらった「おつまみセット」をひと通り眺めてから、綺麗な色のオリーブをひとつ。口に入れると、ちょうどの歯触りで優しい漬かり具合。さすが自家製ですね。
 それから気になるこれ! こんがりとした四角いの! ひよこ豆のフリッター「パネッレ」。サクサクッ! として中がしっとり素朴な味わい。軽い食感についつい手が伸びてしまって、これまたビールがすすむなぁ。
 このドライトマト、ギュッ! と凝縮された旨味の爆弾だ……。ジュワーッと味が出てきて、またビールをゴクリ。
 そして生ハム。口の中に入れて、ふわっと溶けて無くなりそうなところをすかさずビールで流す。さらに、クリスピーなフォカッチャ。これでもう大満足!
 シチリア料理って美味しいんもんだなあー。いやー、本当に至福のソトノミでした。ご馳走さまでした!

 火事と喧嘩は江戸の華……。火災だけではない、先人たちは様々な災害に脅かされ、それらと対峙してきた。そしてこれからも防災・災害対策がなされ、予測困難なものを可能にすべく研究が続けられてゆく。災害発生後の様々な処理も。
 対岸の火事では済まされないぞ。いつ我が身に降りかかるか判らないぞ。そんな気持ちで過ごすことが減災につながるのかも知れない。
 地震、カミナリ、火事、親父。でも、ソトノミストはカミさん怖い。

 

 


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