チリ北東部のサンペドロ・デ・アタカマという町から四駆の車に相乗りし、ボリビアにあるウユニ塩湖へ向けて出発をしたところ。低地から山あいに向かって走っているため、標高差で気温がどんどんと下がっていく。
しばらくしたところで、車は国境に辿り着く。そして簡素なコンクリート造りの移民局で出国手続きを終えた先には、アンデスの山々が見え始めた。
僕を入れて5人の旅行者をガイドするのは、ドライバーのルシオという男。自慢のランドクルーザーのハンドルを握り、壮快に車を走らせる。
移動中に目にしたのは、雄大なアンデスの景色、地熱で沸き立つ温泉、それにプランクトンで赤色に染まる不思議な湖の光景など……。
スペイン語の曲が流れる車内で、ルシオがときおり口を開く。
「この仕事を始めてからもうずいぶん経つけど、トヨタは丈夫で最高だ。大金を払って買った甲斐があるな」
「ドライバーの仕事はもっぱらアタカマとウユニの間だけだから、おれはいつもここらのどっかを走ってるわけさ」
「家族? いま向かってるウユニで暮らしてるよ」
見た目と違い穏やかな口調で話すルシオが、こちらを見てニコリと笑う。ふと、助手席のドアミラーに目をやると、後ろのバンパーに立てられた赤い旗が風になびく様子が映っていた。
ドライブ中に晴れ間は続かず、すぐに雲が広がり、小雨まで降り出す不安定な空模様。
それでもなぜか景色の良い場所を通る時は、運良くあたりに光が差し、高地独特の濃い青空が姿を見せた。