ソトノミスト「江戸川橋・目白台」をゆく。


 本日のソトノミストは、地下鉄有楽町線「江戸川橋」1a出口を降りた。
 地上に出てすぐ現れるこの橋こそ、「江戸川橋」である。

 

 文京区は南西に位置するこの地を流れるのは神田川。しかし昔、この辺りでは江戸川と呼ばれていたらしく、「江戸川橋」がある所なのでこの駅名がつけられたのだそうだ。
 この界隈は、江戸の頃より紙漉きが盛んで、その名残から印刷や製本、出版関連の会社も多い。

 橋を渡れば左手に、「江戸川公園」の大きな石碑が目に入る。この公園は川沿いに続いていくようだが、ここを歩くのは次の機会にするとしよう。

  

 ちょっと歩けば「目白坂下」交差点がある。信号は渡らずに左折して、目白坂を上がる。
 目白通りを目白駅方面へと歩く。

 坂を上がりはじめるとすぐに見つかる黄色い看板は、「関口フランスパン」。ガラス越しにたくさんのパンが目を引くこのお店は、120年の歴史を持つ老舗なのだそうだ。

  

 店に入れば、形や色も様々なパンたちに目移りがする。そしてその香りに心は躍る。ここでサンドイッチでも買って、奥にあるイートインスペースでいただくのは、ちと照れる。やはり持ち帰りである。
 迷いに迷って選んだのは、ジャーマンドック。
 香りを嗅いでみる。「今日のクラフトビールのアテになりそうだ!」と思う。
 お会計を済ませ、お店を出て、また目白坂を上る。

  

 坂を上りきった右手に現れたのは、あまりにも巨大な建造物……。東京カテドラル聖マリア大聖堂」である。
 かの丹下健三により建設された大聖堂の外観は、岩場の水面に舞い降りる銀色の白鳥をイメージしているらしい。ここは音響効果も計算して設計されていて、初代のパイプオルガンなどはユーミンの「翳りゆく部屋」で使われたことでも知られる。
 目の前の巨大な白鳥は、雲ひとつない青空を背に眩しく輝いている。その姿に酒……ではなく、息を呑んだソトノミストであった。

 カテドラル教会の向かいには椿山荘がある。
 椿山荘は広大な庭園にホテルや宴会場を擁する施設である。結婚披露宴の後であろう、建物から出てくる御仁達は、引き出物らしき袋を手に上機嫌である。

 また、目白駅方面へと歩き出す。するとまた気になる看板。

  


 「野菜倶楽部 oto no ha Cafe」の文字。その店先には露店が出ており、並んでいるのは見慣れぬ野菜ばかり。すべて無農薬で作られたというカラフルな大根たちに驚かされる。白や緑に、赤、紫も。形もサイズも、実に様々。思わず気に入った一つを購入。「塩漬けにして頂こうか!」と思うソトノミスト。

  

 聞けば、色つき大根はサラダはもちろん、お吸い物にすれば色味が変わって楽しいですよと店主。店内ではこれら野菜を使った料理が堪能できるらしい。

 また、歩く。大根の入った袋は少々重たいが、食べるのが楽しみだ。
 ここ目白台には商店街のような賑やかさはないが、静けさと共存する店や施設が肩を並べているところが心地よい。
 昔ながらの文具店がある。宅配ピザ屋が二軒、にらみ合うようにして対面している。店主と客が親しげに話している洋菓子屋さんがある。

 そんな中にある一軒の古書店、「青聲社」。奥行きのある店内の書架に惹かれ、ちょっと上がらせて頂くとする。
 壁一面の書架には、哲学書から落語の本までぎっしりと詰まっていて、溢れる本たちは奥のレジ脇にも積み上げられている。

  

 古書だけではない、古物もある。見たことのないもの、懐かしいもの、実に様々な古物が所狭しと展示されているのだ。この異空間に迷い込んだソトノミスト、掘り出し物を見つけようと時間が経つのも忘れ、目を皿のようにしていた……。

 物色買いした掘り出し物が何であったかはここでは書かないが、店を出たソトノミストは信号を渡り目的地の公園へと向かう。
 目白台図書館の前を通り過ぎると、下り急勾配に迂曲する坂が現れる。これが「鉄砲坂」だ。
 東京音楽大学の学生寮あたりに鉄砲の射撃練習の的場があったらしく、その名がついた。日本坂道学会会長の山野勝氏も「荒々しさとしっとりとした雰囲気に、江戸の香りがする。」と著書に評されている名坂である。

 

  

 下る鉄砲坂の中腹を、右に逃げる道がある。そこを行けば関口台公園にぶつかる。
 こぢんまりとした関口台公園の敷地の半分は山の斜面になっていて、たくさんのツツジが植えられている。燃えるような一面のツツジを見るにはまだ早いが、もう花を開かせている種類もある。

  

 斜面を登る。頂上にベンチ発見。
 腰かければ、目に前に首都高速5号池袋線が走っている。つぎつぎ車が人や物を載せて流れてゆく。首都高は曲がりくねった道路で有名であるが、この位置は直線が1キロ続くちょうど真ん中。ブレーキもかけず車は走り去る。

 持参したマイ保冷バッグには、多めの氷と小瓶のビール、それにタンブラーが入っている。
 よく冷えた小瓶のクラフトビール「TOKYO BLUES」の蓋を開け、注ぐ。白い泡と、やや濁りのある濃麦色の液体を眺めて一口、喉を鳴らす。果実香と柔らかな甘みがサラリと駆け抜けてゆき、余韻の苦みがやってくる。

  

 空を仰ぎ、一息ついて今度はジャーマンドックである。
 口へ運び噛みつけば、音をたてて弾けるソーセージ。
 そいつを「TOKYO BLUES」で流し込めば、ソトノミストの心のBLUESは加速してゆく――。
 
 


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